知財判例メモ

自分用の備忘録として、知財の主要判例や、実務に役立ちそうな裁判例などをまとめていきます。理解しやすさを重視して、自分の理解の範囲内で表現を変更している箇所があります。正確な内容を知りたい方は、判決文をご確認ください。

最判平11.4.16「膵臓疾患治療剤事件」

三者が、特許権の存続期間中に、特許権の満了後に製造販売することを目的として、後発医薬品について薬事法14条所定の承認申請に必要な試験を行うことは、69条1項の「試験又は研究のためにする特許発明の実施」に当たり、特許権の侵害とはならない。

理由

  • もし、承認申請に必要な試験が特許法69条1項にいう「試験」に当たらないと解すると、特許権の存続期間が終了した後も、なお相当の期間、第三者が当該発明を自由に利用し得ない結果となり、存続期間終了後は何人も自由に特許発明を利用して社会一般が広く益されるという特許制度の根幹に反する。
  • 一方、第三者が、存続期間中に承認申請に必要な範囲を超えて生産等することは、特許権の侵害として許されず、そう解する限り、特許権者にとっては特許発明の独占的実施は確保される。もしこれを承認申請に必要な試験のための生産等をも排除しうると解すると、特許権の存続期間を相当期間延長するのと同じ結果となり、特許法が想定する特許権者の利益を超えるものといわなければならない。

 

平成10年(受)第153号 医薬品販売差止請求事件

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/235/052235_hanrei.pdf