知財判例メモ

自分用の備忘録として、知財の主要判例や、実務に役立ちそうな裁判例などをまとめていきます。理解しやすさを重視して、自分の理解の範囲内で表現を変更している箇所があります。正確な内容を知りたい方は、判決文をご確認ください。

最判平14.2.22「ENTIES事件」

商標権の共有者の1人は、共有に係る商標登録の無効審決がされたときは、単独で無効審決の取消訴訟を提起することができる。

理由

  1. 取消訴訟の提起は、商標権の消滅を防ぐ保存行為に当たるから、共有者の1人が単独でもすることができるものと解される。
  2. 商標権の設定登録から長期間経過した後に他の共有者が所在不明等の事態に陥ることや、他の共有者の協力が得られない場合も考えられるところ、このような場合に、共有に係る商標登録の無効審決に対する取消訴訟が固有必要的共同訴訟であると解して、共有者の1人が単独で提起した訴えは不適法であるとすると、出訴期間の満了と同時に無効審決が確定し、商標権が初めから存在しなかったものとなり、不当な結果となりかねない。
  3. 共有者の1人が単独で提起できると解しても、認容審決が確定した場合には、その取消しの効力は他の共有者にもおよび、再度、特許庁で共有者全員との関係で審判手続きが行われることとなる。他方、請求棄却の審決が確定した場合には、他の共有者の出訴期間の満了により、無効審決が確定し、権利は初めから存在しなかったものとみなされる。いずれの場合にも、合一確定の要請に反する事態は生じない。さらに、各共有者が共同して又は各別に取消訴訟を提起した場合には、これらの訴訟は、類似必要的共同訴訟にあたると解すべきであるから、併合の上審理判断されることになり、合一確定の要請は充たされる。

 

 平成13年(行ヒ)第142号 審決取消請求事件

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/340/052340_hanrei.pdf